ファッション業界のご意見番、栗山愛以が2026年春夏のパリファッションウィークから、キラリと光る注目の若手ブランドをピックアップ! 2025年9月29日(月)から2025年10月7日(火)の期間、現地直送で"知っておかなきゃ損"なブランドをどんどんお届けします。
04. JennyFax(ジェニーファックス)
ブランドスタートは2011年なのでもはや「若手」ではないのだが、オフスケジュールでプレゼンテーションを行ったので特別にご紹介。
思いもよらぬアイデアが思い浮かぶこともある束の間の自由時間、「トイレ休憩」がキーワードになったようで、下着をおろす途中のようなデザインなどが見られた。オフィス空間で、10人のモデルが仕事の最中にぼんやりと逃避している様子を表現。

さすが、台湾でアメリカのカルチャーに憧れを抱きながら育ち、ヨーロッパでファッションを学び、東京をベースに活動するデザイナー、シュエ・ジェンファンの発想はさまざまな習慣や価値観が交錯していて独特。既視感のあるクリエーションが溢れる昨今だが、ぜひオリジナリティを発揮し続けていってほしい。
アクセサリーは私も愛用しているパリのジュエリーブランド、ディヘラとコラボレーションしている。

photography: JennyFax,Itoi Kuriyama
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03. August Barron(オーガスト バロン)
今年ALL-INからブランド名を変更したオーガスト バロンは、ベンジャミン・バロンとブロール・オーガスト・ヴェストボが手がけるブランド。2015年雑誌の制作からスタートし、19年よりコレクションを発表している。2025年度LVMHプライズではファイナリストに。
今季はオフスケジュールでショーを開催。どうやら来日した際に主婦が緊縛プレイをしているボンテージの専門誌(?!)を見つけたようで、「Real Housewife」と題し、縛られてめくれた状態の服を表現したという。なかなかすごいテーマだが、1950年代のアメリカ郊外の主婦をイメージしていて、エロティックというよりはかわいらしく着地している。
モデルたちはそうしたムードを汲み取ったウォーキングを披露し、中には観客にちょっかいを出すシーンも。狭い会場は熱気に溢れ、盛大なショーとはまた違う興奮があった。
デザイナー2人がチャーミングなので思わずサポートしたくなってしまうのか(?!)、今季もスタイリスト、ロッタ・ヴォルコヴァをはじめ豪華なスタッフが集結。ペトラ・コリンズがモデルとして登場した。

photography: Pascal Gambarte, courtesy August Barron
2025年春夏に引き続き、GUESSとコラボレーションしている。

photography: Pascal Gambarte, courtesy August Barron
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02. Matières Fécales(マティエ フェカル)

ドーバー ストリート マーケットのサポートを得て先シーズンデビューした、アーティストデュオ「フィーカル・マター」のブランド、マティエ フェカル。白塗りのメイクやスキンヘッドなど、ゴス方向の独自の感性を持っている。
デザイナーの1人、ハンナ・ローズの名前から着想を得た今季は、さまざまなタイプの人々がモデルに登場。いつもながら端正なテーラリング、バラのモチーフで彩られたドレスはただただ美しい。ポーズではない、真の多様性への賛美があり、心に訴えかけてくるショーだった。



帽子はスティーブン・ジョーンズが手がけ、シューズはクリスチャン ルブタンとのコラボレーション。


湾曲したヒールの見た目は美しいものの、よほど安定感がないのかウォーキングに苦戦するモデルたちが続出。しかし、それも世間の強い風当たりにも負けずに信念を貫こうと必死で歩を進める姿にも見えてしまったのだった。

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01. HODAKOVA(ホダコヴァ)

2021年、スウェーデン・ストックホルムでエレン・ホダコヴァ・ラーソンが設立したボダコヴァは、昨年度のLVMHプライズでグランプリを受賞し、注目を集めているブランド。牧場で生まれ育った思い出をベースにし、中古品をアップサイクルしたシュールなものづくりが持ち味で、先シーズンはバイオリンを頭に載せたり、ダブルベースをドレスに見立てたり。しかし決して学芸会的にはならず、不思議な品格が漂ってしまうので目が離せない。




今季は傘の骨、ファスナー、本、藁などを取り入れていたが、スタイリスト、ロッタ・ヴォルコヴァの手腕も手伝って端正な佇まいに。金属を用いたアイテムに温かみのあるニットの組み合わせは思わず真似したくなってしまう。





